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学長対談シリーズ

学長対談シリーズ グローバル人材育成と女性の活躍に関する 座談会

第3回ゲスト:独立行政法人 国際協力機構・柳沢香枝理事、独立行政法人 国際交流基金・柄(ツカ)博子理事

国際緊急援助隊事務局長を務め、女性で初の国際協力機構の理事となった柳沢香枝理事。国際交流基金で初のプロパー女性理事となった柄博子理事。本学で初めての女性学部長となった武田千香言語文化学部長と吉田ゆり子国際社会学部長を加え、女性の活躍、そして日本と世界の架け橋となるための資質などについて懇談した。

立石博高学長(以下、立石学長) 今日は本当にお忙しい中、ありがとうございます。本日は、国際協力機構(以下、JICA)の柳沢香枝理事、国際交流基金(以下、交流基金)の柄博子理事にお越しいただきました。柳沢理事は本学中国語科、柄理事は本学スペイン語科のご出身です。お二人に加え、本学からは、武田千香言語文化学部長と吉田ゆり子国際社会学部長にも参加いただき、女性の活躍についてもお話をしていただければと思います。まずは、なぜそれぞれの機関を志望されたかを伺えればと思います。

p1.png柳沢香枝理事(以下、柳沢理事) 私たちの世代はまだとても女性の就職が難しく、国立大は駄目とか、現役でないと駄目とか、実家通いでないと駄目とか、そういうすごく厳しい時代なので、そんなに選択肢はありませんでした。つまり男女雇用機会均等法ができる前です。就職活動中、民間企業に就職した先輩に、同級生の男性は外回りで女性はお茶出し、大学の成績は関係ないと言われて、公的なところの方が良いかなと思い、ちょうどその年にJICAで中国語による入社試験が始まったので可能性があると思い志望しました。出発点は男女同等でちゃんと働けるところに行きたかったのです。

立石学長当時まだ厳しい時代で、公的機関の方がそうした意味では少し進んでいたということですね。

柳沢理事 今思うと、少しではなく、とても進んでいたと思いますね。当時から女性の海外勤務もありましたし、基本は全て平等でした。私は入社して4年目に北京の事務所に赴任したのですが、当時は男性でもそんなに早く海外勤務することはありませんでした。

立石学長 在学中に勉強した中国語が活かせた訳ですね。

柳沢理事 はい。中国語を勉強し、日中関係改善に役立ちたいという思いがありました。ただ、中国一辺倒にはならず、広くいろいろな国と付き合いたいという希望もありました。そのために、在学中にはまったく勉強しなかった「開発」についても知る必要がありました。私の場合は運良く仕事を通じていろいろ勉強できましたし、留学もさせてもらいまして、自分に欠けている部分をかなり補うことができました。

p2.png立石学長 先日、元ユネスコ事務局長の松浦さんと対談をさせていただいた際に、国際機関で働くには幅広い見識が必要だ。そして、さらに自分の得意な分野に精通することが必要だとおっしゃっていました。本学は、とても幅広い知識は身につきますが、専門性をまだまだ十分に培うことができていないのではないかと思っておりましたので、大変厳しいご意見をいただいたなと思っております。柄理事は、なぜ交流基金を志望されたのですか。

柄博子理事(以下、柄理事) 柳沢理事の言われた様に、私たちの世代は、民間企業に行くと全然男女で仕事が違うと聞きました。今と違ってインターネットとかもない時代なので『国際派就職事典』という様な本がありまして、国際的に働けて、一応東京外大で学んだ言葉も活かせるような仕事を探していく中で、交流基金を知りました。学生時代の先輩にも話を聞き、女性にとってはとても良い職場だと聞き入社試験を受けました。私もメキシコの事務所に、32歳の時に所長で行くことができました。「女性所長」は初めてでしたので、初めは大変な苦労もありましたが、帰る頃には帰りたくないぐらいとても楽しくなっていました。言葉についても、しばらく経つとちゃんと仕事ができるレベルになり、在学中に東京外大で教えてもらった基礎がすごく大事なのだと思いました。

p3.png立石学長 異文化世界の中で生活する、そういった意味で、東京外大時代の4年間が役に立ったということですね。

柄理事 東京外大には外国人の先生もいらっしゃいましたし、在学中の短期留学先での経験もすごく役に立ちました。東京外大でのスペイン事情や中南米事情、そして芸術などの文化についての授業が様々なところにつながっていくということを改めて感じました。

立石学長 柄理事は、交流基金に入られてどの様なお仕事をされたのですか。

柄理事 交流基金の事業は、日本語教育、文化芸術、日本研究・知的交流の3つの分野ですが、私は比較的日本語教育に関わる期間が長かったですね。最近は官房部門も多く担当しました。人事課長時代に子育て前の若い女性をどんどん海外拠点に派遣することに力を入れました。そういう機会が与えられると、人はすごく大きくなるということを感じました。

立石学長 本学は日本語教育にも力を入れています。「東京外国語大学」という大学名からなかなか外に見えづらいのですが、実は本学は1954年に初めて国費留学生を受け入れて、60年余り留学生に対する日本語教育・日本紹介を行っています。その歴史を活かして、今、新たな取り組みを始めております。「国際日本学」という分野を本格的に立ち上げました。来年度からは大学院に「国際日本専攻」という専攻を設け、グローバルな視点に立った日本研究を進めていきます。やがては学部にも国際日本学部を設けたいと思っております。

p4.png柄理事 日本語と日本研究、そして日本文化、この3つは本当にすごく密接に関わっていると思います。言葉だけではなく土台となる「文化」が大切である。学生時代に教わったのはそういう意味だったのだなと、後になってからわかってくることがあります。

武田千香言語文化学部長(以下、武田学部長)  外国語学部から言語文化学部と国際社会学部に分かれて、これまで混在していたものが明確になり、言語文化学部の学生には、自分の専門は言語と文化なんだ、というのをしっかり認識してもらいたいと思っています。言語と言語、文化と文化をつなげる様な人間になってほしいと思うのですが、言語と文化は社会から浮遊しているものではなく、社会の問題や争いや衝突は、言語と文化がかなり関わっているので、その点もしっかり認識してほしいと思っています。そのために、基礎的な授業に加え、実社会での実践につなげていける様なカリキュラムを目指したいと考えています。

p5.png立石学長 先ほど柳沢さんが言われた、専門性を持つということ、特に国際社会との関わりにおいて非常に重要だと思いますが、吉田学部長、その点でお話をしていただけますか。

吉田ゆり子国際社会学部長(以下、吉田学部長) 国際社会学部で、こういう人材を養成したいと考えていることとJICAのそれがほとんど合致しています。JICAの掲げておられる考え方に本当に共感できます。国際社会学部には世界の貧困、格差の是正、災害のために困っている人たちに何か支援をしたい、という学生が実際、多くいます。ただ、その気持ちを学部教育の中で充分に形あるものにしてあげられているかが課題だと考えています。柳沢理事に伺いたいのですが、JICAの4つのビジョン(グローバル化に伴う課題への対応、公正な成長と貧困削減、ガバナンスの改善、人間の安全保障の実現)を実現するために、どういった仕組みづくりをされているのでしょうか。本学の教育のヒントにできればと思います。

p10.png柳沢理事 JICAは取り扱っている分野がとても広いので、一言で言い表すのはすごく難しいのです。道路や橋や港の様なインフラもあるし、教育、保健、障害、農業、エネルギーなどもあります。要するに社会の発展の要素となるものの中で、交流基金が担当する文化や言語を除いたものがJICAの守備範囲となります。学生時代には、その根幹にある世界の状況をしっかり学べるなら学んだ方がよいと思います。一昔前は、開発は南北問題であると言われていましたが、今の世界はもっと複雑化しています。それをどういう風に解決していけばいいのかという様なことを考えていくことが大切だと思います。

吉田学部長 国際社会学部には開発や経済や国際政治に関わりたいという学生がとても多いのですが、そういう意味では、学問的・専門的な知識を大学で勉強しながら、現地に行きなさいということになるでしょうか。

柳沢理事 むしろ問題意識があるかどうかということが大切だと思います。

立石学長 昨今の大学のあり方として、これまでは社会に出てから身につけてきたことを、様々な形でカリキュラムの中に組み入れていかなければいけない社会的要請があると思います。大学の4年間で、いろいろな形で問題意識を高め言葉もきちんと学べる様にしたいと思っています。本学は昨年、スーパーグローバル大学構想に採択されました。その最大の狙いは「留学200%」で、要するに4年間の在学中に留学を2度させようと考えています。1度は4週間ぐらいの短期留学を1年次に行い、2、3年次で半年〜1年の長期留学をさせたいと思っています。相手校との協定に基づいて、きちんと単位化して様々な授業を提供したいと考えています。地域を理解するためにまずは体験させ、もう1回学問化する、そんなふうに考え ています。

柄理事 東京外大在学中は、私は中南米というよりどちらかというとスペインの方を中心に学びましたが、メキシコにも一度旅行に行ったことがあります。しかし、旅行をするのと仕事をするのとでは全然違い、友達ができないと結局仕事もできないし壊れた洗濯機も直らないというのがよく分かりました。友達がいると、そういったことは友達の友達とかが来てすぐに直してくれるのですが、普通の手続きを踏んでいるといつまで経っても来てくれない。

p11.png立石学長 そうすると現地体験、その中での人間関係、人のネットワークをつくるということが大事ですね。

柄理事 そうですね。それがいったんできると、仕事が本当にどんどんうまく回ってくるし、楽しくなってきましたね。

武田学部長 1つお二人に伺いたいのですが、今までお仕事で出会ってきた東京外大の在学生や卒業生で、良いと思われた点と駄目だと思われた点をお話いただけますか。

柳沢理事 いろいろな外大生がいますが、私が中央アジアに赴任していた時に、たまたま同窓会がロシア旅行を企画し、私も参加させていただきました。その際に感じたのが、東京外大の卒業生は教養が豊かで日本語の語彙も豊富だということです。

立石学長 人文社会系の大学で学ぶということはそういうことだと思います。

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大学文書館展示スペースにて

柳沢理事 ロシア語科の出身者だけではなくいろいろな語科の方が参加していたのですが、皆さん好奇心が強く、同じものを見ながら様々な感想を言い合っていたのがすごいなと思いました。

武田学部長 

どんな文化でも、どんな言語でも、抵抗なく入っていってしまって、好奇心で親しんでいくというところですね。

立石学長 学生を育てるには、単にカリキュラムを整備するだけではなく、留学、そしてボランティアなどの課外活動がとても重要だと思います。そうした中で、主体性やチャレンジ精神が培われるのだと思います。こうした形でますます、本当の意味で国際社会の中で日本と世界の接点になり、架け橋になっていく、そういう人材を輩出していきたいと思っています。

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ボランティア活動スペース(VOLAS)にて

吉田学部長 私がこの大学の学生について本当に感心するのは、とても普通に自然体で外に出ていく、海外に出て行けてしまうということです。そして、普通の庶民生活や暮らしを、自分たちと同じ目線で見ることができる点です。そういう学生のよさを生かしながら、社会の力になれる、貢献ができる人材になってもらいたいと思っています。

武田学部長 企業がグローバル人材に求める素質・能力で、2011年には3番だった「海外との社会・文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応」というのが、今年は1番になったそうです。いよいよ私たちの大学そして学部の時代が来た、という感じですので、その様な人材の育成により一層力を入れていけたらいいなと思います。

立石学長 本日は本当にありがとうございました。

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